M.D.学修院

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       英語

     ペラペラしゃべれる法


    ~氏の場合~
 
 
 
 
 
 
                            -目 次-


                       ☆はじめに 
                       ☆本気で英語を始めた理由
                       ☆まずは受験英語の総復習だ!
                       ☆発音を磨こう!!
                       ☆でもお金は無い!!
                       ☆続けるには工夫も必要
                       ☆一番大事なのは「やる気」と「根性」
                       ☆ここからが本当の勝負!
                       ☆外国人の友達を作ってみよう!
                       ☆英語ができれば世界が広がる
                       ☆その後は……


                                                                                                                                                



                    -はじめに-


 この「英語がペラペラしゃべれる法!!~M氏の場合~」は、2000年に「合格する究極
の勉強法」の中で発表した「英語をぺらぺらしゃべる法~M氏の場合~」に若干の改訂を
加えて、なおかつ2001年に「勉強法」と切り離し、独立させたものです。(2007年9月ホー
ムページ用に編集)

 「国際化」「グローバルスタンダード」などの言葉を耳にするようになって久しいですが、真
の意味での「国際化」とは一体どのようなことを言うのでしょうか。

 少なくとも「日本に来る外国人が日本語を勉強すればいいんだ」とか「私は日本から一生
出ないから、英語なんてできなくてもいいんだ」などという幼稚な考えでは、真の「国際化」
など有り得るはずもありません。

 現在、世界の共通語として『英語』が採択されています。アメリカ・イギリス・オーストラリ
ア・カナダをはじめ、東アジアでもタイ・フィリピン・シンガポールなど、世界のあらゆる地域
で英語が公用語として使われているというのが、その理由の一つです。
 また、ドイツ語、フランス語、また日本語など他の言語と比べて、文法が単純で外国人に
も学習しやすいという点も、国際語としての支持を集めている理由の一つであるとも言わ
れています。

 現在、多くの日本人が「英語がしゃべれたらなあ」という気持ちでいると言います。そして
多くの人が英会話スクールに通い、そして挫折します

 ほとんどの英会話スクールがレッスン料を一年分一括で払わせるシステムを取っていま
すが、それは多くの人が途中で挫折してしまうことを最初から見込んでいるからです。ちな
みに出席できなかった分のレッスン料は、ほとんどの場合返ってきません。

 また、海外に留学した人の多くが、英語を本当にものにできずに帰国してきます。つい日
本人同士でかたまってしまったり
英語を習得する前に留学期間が終わってしまったり

ることがその大きな理由です。

 ここでは、私自身の経験を通して、英語習得法についての私の経験と考えを述べさせて
頂きました。

 私のとった方法は、まるで僧侶が荒行に耐えて修行しているかのようなもの、こん
なことに耐え得る人間はそうはいないだろうと思っていましたが、つい先日ある雑誌によく
似た方法で英語を習得した人の記事が載っていました。「ヘー、俺以外にこんな物好きが
いるんだ」と、びっくりするとともに、少し嬉しくなってきました。
 記事によると、彼は現在某国立大学の大学院生で、毎日喉が痛くなって最後には涙が
出てくるほど何時間も『音読』を続けた結果、「君はアメリカ人か?」と間違われるほど英語
が流暢になったとのことで、その記事を書いた記者が「それなら自分も」と挑戦してみたと
ころ、涙が出る前に挫折して涙をのんだのだということです。

 私はもともと喉がそんなに強くなく、一時間も授業をするともう喉が痛くなり困っていまし
たが、『音読』を毎日続けるようになってからは、日々喉が鍛えられたのか、いつの間にか
痛くならなくなっていったのを、その記事を読んで思い出しました。

 では、本編へどうぞ!




    ☆本気で英語を始めた理由

 英語を身につけるのに、莫大なお金がかかると思っている人は多い。

 「海外に留学しなきやダメでしょう!?何百万円もかかっちゃうわよ」「英会話スクールで
年間何十万円もかかるって!そんな余裕ないよ」「お金と時間があればねえ」などなど。

 そんな思い込みや勘違い、はたまた一種の言いわけ(!)に一石を投じようと、英会話の勉
強を始めたのは23歳の時。

 もともと英語が好きで、中学生以来最も熱心に勉強した教科のひとつであったが、もちろ
ん英会話スクールには通っていなかったし、『英会話』などまったくできなかった。
 発音もカタカナ読みだし、リスニングも全然できない
 さらに、大学では英語などほとんど勉強しなくなった。地元の学習塾で中学生に英語を
教え始めた頃には、丸5年のブランクがあったことになる。

 そんな状況だったので当時のことを思い出すと、「我ながら、よく教えられていたものだ」
と別の意味で感心する。
 発音は悪いし、単語も文法もほとんど忘れている。ある日の授業中“church”という単語
が出てきた時、意味が分からずあわてて辞書で調べたこともある。

 でも当時はそれでいいと、本気で思っていた。「自分は『英会話』を教えるのではなく『
験英語
』を教えるのだ。発音なんて関係ないじゃないか
」といった具合である。塾の英語
教師、いや学校の教師でさえ、そのように考えている人は多いのではないか。ともかく、そ
れで半年ほどが過ぎた。

 ところで当時下の妹がちょうど大学受験を控えており、時々長文問題や文法問題をみた
りしていたのだが、なんと全く分からない。正直ショックであった。つい何年か前はスラスラ
と解いていたはずのものばかり。それが解答を見ながらお茶を濁のが精一杯と
は……。

 中学生の英単語でも分からないものが出てくるのだから、高校英語ともなればこうなる
のも当然なのだが、「俺は英語はできる」という記憶のみが先行し、それがすでに「過去の
栄光
」となってしまっていることに気づかされたのだ。

 そんな時、私の人生を変える出来事が起こった。

 出来事というよりも出会い言った方がいいかもしれない。
 河合塾講師の「河村一雄」先生である。といっても一方的な出会い、つまりテレビ講座
出演している河村先生を偶然に見ただけなのであるが……。
 妹が録画して見ていたのを、私も一緒に見た。そして驚いた。

 「すごい!」「自分の授業と全然違う」「思わず引き込まれる」

 実は当時「自分の授業はなかなかうまい」などと密かに自惚れていた。ところが、それが
とんでもない勘違いであることに気がついたのだ。

 まず発音がうまい!ネイティプ並である。事実一緒に出演していた外国人アシスタントと
もなにやらペラペラと会話している。
 それだけでも十分に魅力的なのだが、さらに英語長文を事もなげにスラスラと読んでい
く様には圧倒された。
 そつのない解説とリズムのよい説明。何もかもが一種のカルチャーショックだった。

 「こんな授業があったのか!?」

 これがその時の正直な気持ちだ。(こんな授業、受けたこともなかった……)
 自分の場合は、発音の悪さをごまかす為に、必要最低限の英語以外は発音しないし、
発音問題など答えがないと正解が分からない。しまいには「発音問題なんてできなくてもい
」などと言い出す始末。


 「これではいかん!!」と、その時本気で思った。


 ☆まずは受験英語総復習だ!☆

 何事もまず基本が大事なことは言うまでもない。ここをおろそかにしてしまったら上達な
ど望めなくなってしまう。

 英語でいえばまず基本的な文法と語彙力、そして学習方法だ。

 よく「英会話に文法は必要ない。文法は英会話の害になる」などと、まことしやかに言う
人がいるが、ちょっとした伝達ならともかく、
本当の意味でコミュニケーションをしたいと
思うなら
文法を勉強するのは英会話習得の近道にこそなれ害にはならない。文法をキ
チンと習得している人と、あやふやなままの
人が同時に英会話の勉強を始めたとしたら、
後者がそのうち失速してくるのに対して、前者は着実に実力を伸ばしていくだろう。

 また「聞き流していればOK!赤ちゃんがしゃべり出すのと同じように!文法も勉強も
必要ありません!」
などという謳い文句の広告を時々見かけるが、明らかに詐欺寸前の悪
徳商売に他ならない。「聞く」のは大切なことだが、それだけで英語がしゃべれるようになる
などとは誇大広告以前の問題で、専門家なら誰でも失笑してしまうことだろう。

 筋肉を鍛えるのに、電気的刺激や機械で筋肉を動かす器具が通販などでも人気らしい
が、筋肉が鍛えられるメカニズムを知らないから飛びついてしまう。筋肉は他者の力で
動いても『負荷』とはみなさないし、筋繊維の超回復(作業性肥大)も起こらない。もし他者
の力で動かしても筋肉が太くなるのなら、わざわざ重いダンベルでトレーニングしなくても、
右手で左腕の上腕二頭筋をプニプニ動かしていればいいことになる。
実際にはそんなこ
と何時間やろうと何の効果もない
。(アメリカでは最近になって、「その手の機器に筋肉を
鍛える効能はまったくないことが証明された」とのニュースが流れたらしい)

 どちらも『怠け心』を妙にくすぐる商品ではあるが、
ラクに鍛えられる方法などあるはずが
ないと
肝に銘じておくべきではないか。(もちろん間違った方法では、
つらい上に効果も薄
ということになる。正しい方法を知ることがまず大切である)

 それに先の「聞き流していれば……」の商品の場合、
たとえうまくいったとしても(?)、7年
続けてやっと小学一年生の会話レベル
ということになる。「赤ちゃんがしゃべりだすのと同
じ」ということはそうなる。7年毎日続けて、小学一年生レベルでは話にならない。それより
も、我々は母語として日本語を習得しているのだから
、もっと効率よくまた確実に学習して
いけるはずである。

 そこで私は、勉強を始める前に本屋で関連書物を何冊も買って熟読し、英語学習法を
研究した。

 その結果、「英文を10回以上音読する」「テープやCDを繰り返し聞いてネイ
ティブの発音に慣れる
」ことが大切なポイントで、それを毎日欠かさず行うことが肝心
らしいと分かった。

 そんなわけで、私は大学受験さながらに受験英語の総復習を始めた。もちろん教材は
あの「河村一雄先生」著の受験英語参考書である。

 すべての英文を10回以上音読し、基本例文はすべて暗唱するよう努めた。もちろ
ん、一度にすべて覚えきれるわけがないので、最低3回の復習をした。そして英語のテー
プを買って、それを家でも車の中でも、仕事のとき以外はすべてBGM代わりに聞く……と
いうより、外国人の発音に慣れるために聞き流すようにした


 最初はテープから流れてくる英語が全く聞き取れなかった。それどころか、これが英語な
のかドイツ語なのか、はたまたフランス語なのか、それすらも分からない状態であった。
やっと英語なんだなと実感できたのは、それから1カ月後のことである。

 さて、ブランクがあったとはいえ、受験英語に関しては高校時代に猛勉強していただけ
あって、次々に頭の中の水路に水が引かれていくが如く思い出していき、およそ3ヶ月
ですべての勉強が終了した。この頃になると毎日の英文音読が功を奏して、つまりながら
読んでいた英文もずいぶん流暢に読めるようになっていた。

 また河村先生のビデオを繰り返し見ていたので、自分の授業にも大いに役に立ったこと
を覚えている。


        ☆発音を磨こう!!☆


 河村先生のテレビ授業が、当時の自分にずいぶん影響を与えたことは事実で、受験英
語を教えるという点では私も当時すでに十分なレベルにあったと思う。だが、当然まだ満
足などしていなかった。まだ河村先生の『モノマネ』に近いものでしかなかったし、英語もだ
いぶん流暢に読めるようになったとはいえまだまだ未熟だ。

 「外国語なのだから、多少のなまりはあってもいい」という考え方もあるが、ここまで
やったのならとことん極めてみたい。

 そのとき私は23歳。ふっと画面の中の河村先生を見た。
 「河村先生は今いくつだろう?」「おそらく27、8、あるいは30くらいかな……」

 そして決意した!!「オレはまだ23歳。今から死ぬ気で頑張れば、河村先生の年にな
る頃には先生に追いついているに違いない! これから毎日死ぬ気で頑張れば
必ずでき
る!



      ☆でもお金は無い!!


 英語を発音も含めてマスターしたいと思ったとき、真っ先に思いつくのは海外留学だろ
う。私も留学に憧れていた。しかし、そのためのお金も勇気もなかった。

 「だから英会話習得もできない」と言ってしまえば、自分も『いい訳族』の仲間入りだ。
 こうなったら留学などしなくても英会話はマスターできることを
自らの身をもって証
してやろうではないか!

 そこでまた方法論である。

 これまでは、仕事(授業)にも直結させたかったので、文法構文中心の勉強をしてき
た。それに加えて『音読』と『リスニング』をやってきたのである

 それがひとまず終わり、会話中心の勉強にシフトさせようとしたのだが、いったいどうした
らよいのか。

 私のとった方法は「NHKの英会話番組を最大限利用する」ことと「アメリカ映画を繰り
返し見る
」というものだった。

 NHKの英会話番組は、曜日によってレベル別に分かれている。当時は木曜日の番組
(やさしい英会話)が最もレベルが低いものだったので、さっそくそれを見ることにした。
 約3ヵ月の英語テープ聞き流し効果で、しゃべっているのが英語だというのは分かる。(ま
あ、当たり前と言えば当たり前だが)しかし……
「さっぱり聞きとれん……!」
 
その時、ちょうど1月。番組も終盤とはいえ、一番易しいはずの番組でも何を言っている
のか全く聞き取れない。改めてショックを受けた。
 テキストを読めば、簡単な英文ばかりである。まさに中学生レベル。なのに聞き取れな
い!

 とにかく英文を10回音読し、また番組を見る。そうしたら今度はかなり聞き取れることに
気がついた。

 そこで番組はビデオに録画し、『
番組を見てから、次の日に英文10回音読。その後
再びビデオを見て聞き取りに挑戦
』を繰り返し行うことにした。

 2月からは火曜日と金曜日の番組(英会話I)も見ることに。金曜日の方には黒田アーサ
ーとリサ・ステグマイヤーが出ていた。金曜日の方は、前の年の火曜日の番組の再放送
なので、4月にはもうこの番組は見られなくなる。2入がなかなかいい感じで番組を進めて
いて分かりやすかったので、ちょっと損した気分になった(もっと早くから見ておけばよかっ
たと)ことを覚えている。
 4月になると番組もリフレッシュして一から始まる。月曜日、火曜日、木曜日、金曜日の
番組で勉強を始めた。
 火曜と金曜が高校レベルの英文、木曜が中学生レペルの英文、月曜日がその中間くら
いのレベルで、水曜日と土曜日は当時の私にはレベルが高すぎて遠慮させてもらった。

 同時に毎週アメリカ映画をレンタルしてきて、何度も繰り返し見ることも引き続き行った。
 毎日仕事が終わってから、人気のない公園などの横に車を停めて(夜の11:00過ぎ。怪
しい人と思われたかも……?)車内で英文10回音読。声を出すという都合上、深夜である
から家ではできない。そうしたわけで、そばに民家のない公園の横の車中で行ったわけで
ある。

 英文音読は、量も結構あるので小一時間はかかる。そうして帰宅、遅い晩ごはんを食べ
ながら番組のビデオを繰り返し見る。それが終わったら映画を見る。

 仕事が休みの日曜日は、朝から近くの河原に車で行き、ひなたぼっこをしながら英文音
読。この日は一週間分の総復習
、とにかく声に出して英文を読み続ける。大きな声を
出しても、周りには誰もいないのだから気兼ねはいらない。昼になるとコンビニの弁当を食
べて、また音読。夕方5時頃ノルマ終了。その後、体力作りの為スポーツセンターに行きプ
ールで1~2時間泳いだ。当時水泳には週に2~3回通っていた。頭ばかり使って体を使
わない生活はバランスが悪く、必ず歪みが生じてくると思ったからだ。(これは
大学受験時
の反省
)さらに、将来やりたいスポーツができた時、体力不足・筋力不足で上達が遅れ
る、故障しやすくなるなんてのはいやだ、という気持ちもあった。(事実、その後テニスを始
めたので、おおいに役に立った)
 水泳に関しても、本を読んでフォームを研究。基本的に私は、やるなら本格的にやりた
いと思ってしまう人間のようだ。

 とにかく、そんな日々を続けていった。


     ☆続けるには工夫も必要☆

 ところでその前の話になるが、実は英語のテープを聞き流しだして1ヵ月もたたないうち
に、ちょっとノイローゼ気味になってしまった。

 車の中でも自分の部屋でも、それまでは好きなアイドルの歌をずっと聞いていたのだか
ら無理もない。急に何を言ってるかも分からない英語を聞くことになり、それがエンドレス
に続くわけだから、体が拒否反応をおこしてしまったのだろう。

 だが、こんなことでくじけてしまってはおもしろくない。

 そこで工夫することにした。

 体は今まで聞き慣れたアイドルの歌を聞きたがっている。それを無理に禁じるからいけ
ないのだ。

 そこで英語のテープをダビングする際に、およそ10分の英文の後に好きなアイドルの歌
を1曲いれて、また10分英文、そしてまたアイドルの歌……というように編集したのであ
る。

 効果はてきめんで、精神衛生上とても役立ったのを覚えている。


☆一番大事なのは「やる気」と「根性」☆

 そうして4月以降、本格的に英会話番組での勉強が始まったわけだが、とにかく目標は

1年で英会話をマスター
することであった。だからこそ、前述のようなハードなスケジュー
ルとノルマを自分に課し、わき目もふらず勉強に打ち込んだのだ。

 だが、1年と一口に言うが、これが長い。

 2、3ヵ月も経つころにはやはりノイローゼ気味になっていた。
 
「何でこんな苦しいことをやってるんだ」「こんなことして、一体何の役に立つのか」
「やってもやっても上達してないじゃないか」「本当に昨日よりも進歩したのか」「もう
いい。よくやったよ。十分だ」

 そんな言葉が頭の中を駆けめぐる。

 1年の間に、何度「苦しい」「やめたい」と思っただろうか。

 それでもやり遂げることができたのは、やはり「英語を本当にものにしたい!」という強
い思いがあったからだろう。

 それに、好きな英語を思う存分勉強できることは幸せなことだ。

 5教科9科目を限られた時間の中で勉強しなければならなかった大学受験勉強に比べ
れば、大したことではないと思ったりもした。

 そして、「
昨日と今日の違いは分からなくても、3ヵ月前と今の違いははっき
りと分かる。
とにかく絶対に1年間やり通そう!」と決意を新たにした。


   ☆ここからが本当の勝負

 こうして季節は春から夏、そして秋から冬へと移り変わった。年が変わる頃には水曜と土
曜の番組(英会話Ⅱ)も見るようになっていた。画の方も字幕を見なくても分かること
が多くなっていた。

 成果は確実に表れていると実感し、英語がますますおもしろくなってきた頃だ。

 そしてついに1年が経った。

 我ながらよくもまあこんな荒行・苦行を続
けられたものだ。だが、その成果は予想を上
回っていた。

 1年やり通してみると自分でも驚くほどに英語がしゃべれるし、聞き取れる。『
継続は
力なり
』は本当であった。

 さて、ここで満足して勉強をやめてしまってはもったいない。せっかく手に入れたものを、
その後の不勉強で失う現実はすでに味わった。
 それにここまで勉強すれば、あとは普通に勉強していけばよい。あの荒行は大学時代の
不勉強に対するペナルティのようなもの。人が5年かけてやることを、1年でやってしまおう
としたようなものだ。

 それにしても、道を極めるとはなかなか難しい。極めたかと思えば、またすぐに未知の部
分が見えてくる。

 英語の場合も極めたかと思えば、すぐに未習得のところが見えてくる

 考えてみればそれも当然で、語彙や言い回しに関して言えば、ネイティプが10年、20年と
かけて習得するところを、1年やそこらで全部習得できるわけがない。

 私の場合も言ってみればやっと基本を習得したところ。昔から言う「守・破・離」の「守」を
卒業したに過ぎず、慢心するにはまだ早い。『免許皆伝』のためには、
まだまだこれから
が大切
なのだと気持ちを新たにした。


 ☆外国人友達を作ってみよう!☆

 それから5ヶ月ほどが経った頃だろうか。私か勤めていた塾にアルバイトに来ていた学
生が、「外国人の集まるバー」に連れて行ってくれた。

 はっきり言ってカルチャーショック

 こういう『バー』なるものに行ったのも初めてで、それだけでも十分『ショック』なのだが、
客の半分以上が外国人であちこちに英語が飛び交っていたのだ。
 しかも、その英語が分かる。普通の会話なら十分に理解できるようになっていたのだ。
(知らない言い回しやスラングにはついていけなかったが。もっとも、日本語でもそうだがス
ラングは流行りすたりが激しい。知らないからといって気にする必要はないと個人的には
思っている)
 日本人同士なら飲み屋で話しかけることなどないだろうが、英会話の勉強だと思ったの
とその場の雰囲気とで、話しかけるのに躊躇はなかった。

 そうしてカナダ出身の女性と親しくなり、週1回彼女に日本語を教える約束をした。彼女
は私より1つ年下。金髪でスタイルもよく、最初はモデルかタレントかと思っていたほど。無
料で日本語を教えてもらえると喜んでくれていた。こちらも英会話が無料でできるのだか
らありがたかった。

 そのうち普通に日本語を勉強するのに飽き足らず、遊園地で勉強(?)したり、テニスをし
ながら勉強(??)したりした。この時のテニスが、考えてみれば初めてのテニスで、これが今
に至るまで趣味として続いている。


  ☆英語ができれば世界が広がる☆

 こうしてさらに1年が経ち、話すのも聞くのもどんどん上達していった。
 もしあの1年間を英会話習得に使っていなければ、あの『バー』に行っても誰ともコミュニ
ケーションできなかったと思う。当然そこで友達もできなかったろう。

 「身振り手振りで……」と言う人もいるが、その意見には懐疑的だ。一時だけならともか
く、ずっとということになるとお互い疲れる。第一、電話で待ち合わせなど100%できない
友人関係を続けることは難しいのではないか。

 ともあれ、英語を習得したからこそ、こんな貴重な体験ができた。

 『英語ができれば世界が広がる』は本当だった。(テニスというおまけ(?)までついてきた)
 本当に楽しい1年間であった。

                  

       ☆そのは……☆

 それから数ヶ月後、あの『河合塾』が新聞に講師募集の広告を出していた。(河合塾が
講師募集の広告を出しているのを、私はその時初めて見た)
 私の『密かな恩師』河村先生のいる河合塾。(もっとも広島にはいないのだが) そして広
島でも全国でも最大手の河合塾。一度は教鞭を執ってみたいと思い、憧れてもいた。

 そこで思い切って応募し、書類選考を経て試験を受けてみると、3次試験までなんとかこ
ぎつけた。(これだけでも自分にとっては奇跡のようだった)

 最終試験は試験官10人程の前で大学受験レベルの長文を音読し、和訳と解説をすると
いうものだった。これは英会話習得の為に日々やってきたこととほとんど同じ。『運』がい
いとはこのことであろうか。

 英文がホワイトボードに書き込まれていく。ざっと目を通してみると、分からない単語は一
つもなかった。

 「よし!」

 あとは10人程の試験官を前に、あがらずに実力を発揮できるかどうか。
 正直けっこう緊張していが、その緊張を楽しめた。英文もとどこおることなく読めて、和
訳・解説も何とかうまくいった。「これで不合格なら仕方がない」と、晴れ晴れした気分で試
験場を後にしたことを覚えている。

 結果は『合格』(!)だった。

 カナダ人の友達にそのことを話すと、とても喜んでくれた。彼女は大手の英会話スクール
の講師だったので、考えてみれば私は1年以上も無料で英会話レッスンを受けさせてもら
っているようなものだった。

 私にとって、彼女という友人を持てたことは幸せなことだった。

 ところが……。

 さらに1年以上が経ち年度が変わる3月頃、彼女はまだ契約期間の残っていた英会話
スクールを突然辞めていなくなった。

 その頃はちょうどお互いに忙しく、週に1回どころか月に1回会えるかどうかも分からない
状態。私の家に何度か彼女から電話があったとのことなのだが、家族の者が応対しても
英語が分からないので、伝言も残せない。さらに私もすぐに電話をすればよかったのに、
「深夜だから」とか「また今度」と思っているうちに延び延びになってしまっていたのだ。携
帯電話やメールのある今なら考えられないようなすれ違いである。
 公衆電話からやっと電話したのは実に1ヵ月後のこと。だがその時すでに電話は解約さ
れていたのだ。
 どこかに引っ越したのかそれとも電話を解約しただけかなどと思い、一応スクールに電
話してみると「彼女は辞めた」と告げられた。その後の行き先などは「分からない」の一点
張り。彼女にはまだあと1年間スクールとの契約期間が残っているということは知っていた
ので、まさかいなくなるなんていうのは全く予想外の出来事で、しばし呆然とした。

  人の縁というものは……。会えなくなると、とことん会えないものな
のか。あれから今に至
るまで、結局1度も会えず仕舞いである。

 あとで考えてみれば、あの『電話』はそのことを告げようとしたものだったのかもしれな
い。携帯という現代機器が当時ありさえすれば……。我ながら何とも間抜けな話だ。『後悔
先に立たず』とはまさにこのこと。今でも「今頃、彼女はどこで何をしているだろうか」と思い
出すことがある。

 そして現在、外国人と話す機会はまったくなくなった。「
いつかまたそういう機会に恵ま
れた時のために
」という気持ちで勉強を続けている。

 今、私はいろんなことに挑戦中だ。テニス、ピアノ、そろばん、今年(2007年)
からはパソ
コンにも……。そのベースには常にあの『荒行』があった気がする。

 もちろん、英語も今よりもさらに技量を磨いていくつもりである。

 そもそも普段、生徒達に「克己の精神で、自分を向上させる努力をするように」と言っ
ている私自身が、その言葉に反する生き方をしていては、お天道様に申し訳がたたない。

 「人生とは修行である

 何歳になっても、「もう、これでいい」ということはないのであろう。「死ぬ時は前のめりで」
というのは武士の精神だったと聞くが、死ぬその寸前まで努力し続けられたとしたら、これ
ほど幸福な人生はないのではないかと、ふっと思ったりする今日この頃である。


                                            2007年9月吉日
                                          M.D.学修院
                                            代表 門田有示
                      [トップに戻る]